君の世界からわたしが消えても。

 ミヅキはほんと、罪作りな女の子だよ。


 カナの心まで、知らない間にかっさらって行っちゃったんだもんなあ。


 ミヅキは、わたしにとってライバルだった。


 だけど、一番応援してあげたい人でもあった。


 悔しいけど、お互い惹かれ合ってることが目に見えてわかったから、ミヅキが幸せそうに笑ってたから、わたしはなにも言わずに背中を押したんだ。


「ねえ、ミヅキ。カナはいつになったら目を覚ますのかなあ?」


 ミヅキがこの世から去った日、わたしはもうひとり、大切な人を失いかけた。


 失ったと言ってもいいかもしれない。


 だって、わたしの日常にその人はいないから。


 それは、1年半前から今日までずっと眠り続けているカナ。


 ミヅキの、恋人だった人。


 ……ううん、きっと現在進行形だね。


「カナは本当に、こっちに戻りたくないって思っているのかな」


 この前、ペンダントに向けて言った質問を、またしてみた。


 その時、さあっと一瞬、心地いい風が吹き抜けた。


 まるでミヅキが『そんなことないよ』って、『奏汰は戻ってくるよ』って、そう言っているみたいに感じた。


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