君の世界からわたしが消えても。

 今まで、こういうことは何度もあった。


 なにか言いたそうにして、だけど、核心には触れない。


 最後まで口を割らずに気持ちを隠し通そうとするこいつを、奏汰と美月の後ろをふたりで歩いていた時に、何度も見た。


 葉月のそんな姿はとうの昔に見慣れてしまったし、「言えよ」なんて続きを促すたった一言すら、俺の喉に張り付いたまま出てこようとしなかった。


 ……別に、よかったんだ、なにも言ってくれなくても。


 無理に聞き出したっていいことなんてないことくらい、知っていた。


 話したくなった時に話してくれたら、それでよかったんだ。


 いつも大事なことを隠そうとするその姿は正直腹立たしかったし、俺には言えないのかと、無性に悲しくなったりするのも事実だったけど。


 ……俺は、葉月が自ら頼ってきてくれるのを、ずっと待っていたんだ。

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