君の世界からわたしが消えても。

 それなのに、俺から手を差し伸べることはしなかった。


 頼ってほしくて、わざと俺からは手を伸ばさなかった。


 いつか葉月から言ってくれることを、信じていたから。


 頼ってくれることを、待っていたから。


 だけど、葉月は昔から、そういうことができない奴だった。


 誰より優しくて、傷つくことを恐れず、誰よりも周りを想ってる。


 そんな奴だった。


 だけど、本当は誰よりも弱くて、いつも傷ついていた。


 頼るのも隠すのも、下手。


 葉月は、そんな不器用な奴。

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