君の世界からわたしが消えても。

 俺は、葉月のそういう弱いくせに強がりなところが、昔から嫌いだった。


 だからこそ放っておけなくて、奏汰の隣を歩く美月を目で追う葉月のことを、俺はずっと見ていた。


 本当は苦しいくせに、無理して笑うその顔が嫌いだった。


 そんな顔するくらいなら、もっとしがみついて、簡単に譲ったりなんかするなよって思った。


 せめて自分がちゃんと諦められるような終わり方をしろって、切なそうな背中に心の中で何度も叫んだ。


 ……でも、ずるいんだ、俺は。


 葉月のそういう陰った表情を見るたびに、どこか安心していた自分もいる。


 ――それは、俺が葉月を好きだったから。


 奏汰を想う葉月のことが、好きだったから。

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