君の世界からわたしが消えても。

 葉月は、俺なんかよりよっぽど強くて、誰よりもきっと先を見てる。


 だけど、弱いんだ、本当は。


 自分で抱えきれない量の荷物をすでに持っていたのに、増えた荷物でさえもひとりで持とうとする。


 俺に一言、「助けて」って、そう言ってくれればいいのに。


 それを言わない葉月も馬鹿だし、「持ってやる」と言い出せない俺も、本当に馬鹿だ。


 思えば俺は、葉月に頼られたいと願うだけで、その裏側で全てを葉月に背負わせていたんだ。


 ちゃんと笑っているようで、だけど自嘲するように上がった歪んだ口元。


 抱えた膝に顔を埋めている、頼りない後ろ姿。
 

 そんなの、何度も見てきたのに。


 無理をしている、そうわかっていても、俺は自分のエゴを押し通すばかりで、先を行こうとする小さな背中に、なにもしてやれていなかったんだ。

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