君の世界からわたしが消えても。
「もし奏汰に渡せなかったら、これは葉月にあげるね」
これは、ペンダントを買い終わり、カナたちと合流する直前にミヅキに言われた言葉。
恥ずかしがり屋でなかなか意見の言えないミヅキのことだから、渡せなかった時のことを考えたんだと思う。
パーティーの時に渡すつもりだって言ったけど、それなら絶対渡せるよ。
わたしが無理矢理にでも、渡させてあげるよ。
そう言えば、ミヅキは嬉しそうに笑ってた。
……この時は、考えもしなかった。
僅か数十分後には、目の前で微笑む彼女がいなくなってしまうなんて。
そのペンダントがわたしの手に渡るだなんて、考えもしなかったんだ。
帰り道の交差点で、それは起きた。
信号待ち。
行きと同じように、わたしと並んで立つイチの前には、ミヅキとカナ。
赤信号が青に変わり、ミヅキが一歩踏み出したその時だった。
それを追いかけたカナの焦るような声が聞こえたのは。
「美月っ!」
……あの時のカナの声を、わたしは一生忘れられないと思う。