君の世界からわたしが消えても。

「大丈夫そうに見えないから言ってんだよ、バカ」


「バカって、なにそれ!」


 葉月は俺を殴るふりをして拳を握るけど、それが明るく振舞おうとする努力の一部だってことは、なんとなくわかる。


 無理してんだろ、葉月。


 学校休んでこんな時間までここにいるくらいなのに、無理してそんなことしてんじゃねーよ。


「……なんかあるんだったら、今のうちに言っとけ。今ならちゃんと聞いてやる」


 俺は奏汰や美月みたいになにか上手いことを言ってはやれないし、こんな言い方しかできねーけど。


 お前のためになにかしてやりたいって思いは、誰よりも大きいんだ。


 ……まあ、こんな生温い言い方じゃお前は絶対本音なんか言わねーんだろうな。


 案の定、葉月は口をぴたりと閉じたまま、肩を縮こまらせて下を向いている。


 こんなんじゃ、吐き出したいことがあるって丸わかりだ。


 そのくせ頼ろうとしねーんだから、タチが悪い。


 こういうところは少しだけ面倒だと感じるけど、そういう性格だからこそ、溜め込む前に吐かせてやらないと、と思う。


 前まではそれをしてやれなかったから、これは俺が葉月に対して勝手に抱いてる使命感。


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