君の世界からわたしが消えても。
瞬間、目の前に広がった赤い世界。
……ミヅキは、信号無視の大型トラックにはねられた。
スピードを落とさずに横断歩道に向かってくるトラックに気付いたカナは、ミヅキを助けようとして、同じようにはねられた。
誰かの悲鳴を聞いた。
周りの音がなにも聞こえなくなった一瞬があった。
それを、わたしは忘れることができないだろう。
誰かが呼んだ救急車にふたりは乗せられて、放心状態のわたしとイチもそこに同乗して。
なにもかもわからないまま病院に着いて、しばらくするとお母さんとお父さん、それからカナの両親も来て。
なにひとつ理解できないままお医者さんから知らされたのは、すごくシンプルで、残酷な言葉だった。
……ミヅキは、即死だったらしい。
カナは全身を強く打っていたけど致命傷はない。
だけど、これから目を覚ますことがないかもしれない。
そんな、到底現実とは思えない言葉を、お医者さんは言った。
泣くこともできなかった。
だって、理解できなかった。
数時間前どころか、たった今、たった数秒前に笑っていた人が、もう二度と目を開けないなんて、目を覚ますことがないかもしれないなんて。
信じたくなかった。