君の世界からわたしが消えても。
「けど、実際はどうなるかわからないだろ」
「……うん、そうだね。だから、もう決めてるの」
なにかを決意したような顔をした葉月からその先を聞くのは、なんだか少し怖かった。
だけど、耳を傾ける。
「わたし、高校卒業までにカナが記憶を取り戻せなかったら、本当にちゃんと忘れるためにここから離れようと思ってるの。……なんて、今思いついたんだけどね」
葉月は風になびく髪を耳にかけながら、穏やかな表情でそう言った。
「……忘れるって、奏汰への想いを忘れるってことか」
「そうだよ」
「それができてたら、今こんなに悩んでねーだろ!?」
こいつの前でこんなに声を荒らげたことなんて、今までなかった。
葉月の肩を思わず掴んでそう言ったけど、それでも葉月はビビリもせずに、ただ落ち着いた口調で諭すように話し続けた。