君の世界からわたしが消えても。
13 身代わりの月
ずるくてもいいと思ってた。
代わりでもいいと思ってた。
カナの笑顔のためなら、カナの傍にいられるなら。
それでよかったはず、だったの。
わたしはきっと、たくさんある選択肢の中で、一番つらくて最低な答えを選んだのだと思う。
今でも、そう思う。
取り返しのつかないことをして、苦しくて泣きたくなるようなたくさんの後悔を作った。
自分で選んだことから、逃げ出したくなった。
わたしが今回選んだことも、もしかしたら一番最低な答えで、逃げなのかもしれない。
それでも、全部を失くしたカナが明日ちゃんと笑えるように、わたしも前を向けるようになるには、これしかないと思ったの。
わたしはずっと、カナの“月”になりたかった。
ミヅキみたいに隣に立ってカナの笑顔を自然と引き出すような、そんな月に。
けれど、わたしはミヅキにはなれないから。
ミヅキとは別の、カナの“月”になるって決めたんだ。
傍にいられなくてもいいよ。
わたしを忘れていてもいいよ。
思い出されなくてもいい。
遠くから見守るような、カナの行く道を淡い光で照らし出すような、そんな月になれたらいいな。
……ねえ、カナ。
離れていても、ずっとずっと、大好きだよ。
こんなわたしがいたことを、いつかカナは知ってくれるかな。
☆