君の世界からわたしが消えても。
高校を卒業してからは、いろいろなことが変わった。
周りの環境もそうだし、わたし自身もすごく変わったと思う。
ずっと伸ばし続けた髪の毛は今は綺麗な焦げ茶色に染まっていて、肩までのボブヘアーになっているし、化粧も覚えた。
ミヅキとうりふたつだって言われていた顔だって、もうここにはない。
全部全部、覚えた化粧で塗り返してしまったから。
大学に入ってから始まった一人暮らしも、それと同時に絶った両親との繋がりがなくなった寂しさも、ミヅキやカナと離れた場所で暮らすことにも、もう慣れてしまっていた。
……カナは、記憶を取り戻さなかった。
カナとイチと過ごした残りの高校生活の間に、わたしが決めたことを両親に話して説得するのは容易なことじゃなかった。
なんであんたがここまでしなきゃいけないの、って。
そんなこと絶対許さない、って。
泣きながら何度も何度も責められて、懇願されて、それでもわたしは揺れなくて。
ミヅキもいなくなったのに、わたしまで離れていくことがきっと悲しかったんだろうね。
わたしだって、寂しかった。
けれど、それ以上にカナのことが大切で、わたしがこれから前に進むためにはそれが必要なんだって何度も話して。
許してくれたのは、卒業式の一週間前。
その日両親はミヅキが亡くなった時と同じくらい、もしかしたらそれ以上に泣いていた。