君の世界からわたしが消えても。
くしゃりと顔を歪めたカナはわたしだけを見て、泣きそうに瞳を揺らめかせている。
「イチに、もう全部聞いた。俺のためにこうして離れたってことも、もう知ってる」
それに、イチのこともミヅキのことも、わたしのことも全部思い出せたとカナは呟く。
「忘れてて、嘘吐かせて、ごめん」
震えた声でそう言ったカナが泣いているのが見えた。
頭を下げたカナにわたしは首を振って泣くだけで、かける言葉も見つからなくて歯痒い。
だけど、嬉しくてわけがわからなくて、ただひたすらに泣いて。
もうみんないい大人だけど、この空白だった時間を埋めるように、泣きながら笑って、笑いながらまた泣いて、わたしたちはたくさんのことを話した。
後に、イチはわたしの家族にも根回ししていたことを知った。
彼が言うには「葉月は今まで全部勝手に決めたから、俺も勝手に自分で決めた」だって。
……わたしが今までしてきたこと、たくさん悩んだこと、もしかしたらこのイチのせいで全て水の泡になったのかもしれないけれど、それでもイチのおかげでまたこうしてみんなで会えたことに変わりはなくて。
笑っている今があるから、過去はもういいやって、そう思えた。