君の世界からわたしが消えても。

 色とりどりの夏の花と、可愛いカラフルな風船で彩られたわたしたち4人の思い出の丘。


 葉だけになった桜の木に囲まれながら、わたしは純白のドレスを着て白いタキシードを身にまとった奏汰の隣に立っている。


 8月19日。


 今日は、わたしとミヅキの誕生日。


 だけど、それだけじゃなくて……。


「新郎、奏汰さん。貴方は葉月さんを大切に思い、感謝し、尊敬しあえる夫婦になるよう努力することを誓いますか?」


「はい。誓います」


 今日は、わたしと奏汰の結婚式。


 喫茶店で再開したあの日から僅か5か月しか経っていないけれど、ここまで準備が施された素敵な式を挙げられているのは、イチや両親、そして奏汰のおかげ。


 あの日、奏汰はわたしに『葉月のこと、迎えに来たんだ』って言ってくれた。


 高校に行かず高卒認定試験を受け、その後大学に入ったカナは、わたしたちより少し遅れて社会人になっていたらしい。


 給料3か月分の指輪をテーブルの上に置いて、言ってくれた。


 『離れていた7年間、葉月のことしか考えられなかった』


 真っ赤な顔で、そう言った奏汰。


 それを聞いて、わたしは嬉しくて、泣いちゃったんだよね。


 そんなわたしを見て、奏汰もちょっと泣いていたよね。


 イチは、隣で笑っていたね。


 そんな出来事が、もう随分と前のことのように、夢みたいに感じるんだ。


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