君の世界からわたしが消えても。
セミがまた一斉に鳴き始めた。
青々と茂る木々、晴れ渡る空には一筋の飛行機雲。
まさに夏って感じ。
そう思いながら、空を仰ぐ。
「おい」
上を向いてぼーっとしていたら、聞こえた声。
「なーに、イチ?」
隣に視線を移すと、眉間に力を込めた険しい表情でイチは佇んでいた。
なんだろうと思ってじっとイチを見つめる。
「いつまでここにいるんだ」
「え? あー、もう少しだけミヅキと話してようと思うけど。なんで?」
質問の意味がわからなくて訊ねると、あからさまに大きなため息を吐かれた。
……イチ、幸せ逃げちゃうよ。
そんなことを言ったら口をきいてくれなくなりそうだから、言わないけど。
「……だから、探してたんだって。さっき言っただろ」
「え、なんで探してたの?」
そう言うと、イチはイラついたように舌打ちした。
怖いよ、迫力ありすぎる。
というか、はっきり要件言わないイチが悪いでしょ。
なんでわたしがこんな扱い受けてるんだろう、不思議。