君の世界からわたしが消えても。

 だけど、それでも嬉しいな。


 気分は複雑だけど、去年は『誕生日おめでとう』ってあんまり言ってもらえなかったから。


 言ってくれたのは、イチだけだったなあ。


 そういえば、今日誕生日だって言うのに、まだお母さんにすらおめでとうって言われてないや。


 でも、誕生日会をするって言ってくれたのはお母さんだろうし、忘れられてたわけじゃないってわかってほっとした。


 お母さんに心配かけちゃったことだし、イチも迎えに来てくれたし、そろそろ帰ろうかなあ。


「イチ、帰ろーか」


「もういいのか」


「あ、ちょっと待って!」


 帰る前に、ミヅキに言い残したことを言わないと。


 お墓の真正面に立って、ミヅキに見えるように三日月の首にぶらさげたペンダントを指で持ち上げる。


「ミヅキ、安心してね。これは絶対、カナに渡してあげるから」


 目を覚ましたカナがどんな反応をするのかなんて想像したくないけれど。


 わたしにはこれくらいしか、してあげられることがないから。


 ミヅキの願いは、わたしが叶えてあげるね。


「だから、ミヅキは心配しないで。見守っててね」


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