君の世界からわたしが消えても。

 こんなふうに語りかけるのは、初めてだった。


 暇さえあれば銀色の三日月に話しかけてはいたけれど、カナが目覚めるようにと、祈るようにお願いしたのは初めて。


 わたしの言葉に、返事は一度だって返って来ない。


 でも、きっと聞こえてる。


 きっと、見ていてくれてるはずだから。


 そう信じてるよ。


 ゆっくりと瞼を開いていくと、心配そうにわたしの顔を覗き込むイチの姿が露わになった。


 それに驚いたけど、笑ってみせた。


「大丈夫だよ」


 あの日からわたしの心には、ぽっかりと穴が開いたまま。


 だけど、こんなわたしの隣には、イチがいてくれてる。


 だからきっと、大丈夫。

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