君の世界からわたしが消えても。
「……イチ、わたし、ひどいお願いしちゃった。カナをこっちに連れてきてって、ミヅキに」
泣き顔で、涙声でもごもご言うわたしの肩を包み込んでくれた。
全部お見通しだというように、大きな手で頭を撫でてくれた。
今までずっと、隣にいてくれた。
イチだけが、全部知っていたんだ。
わたしがカナを好きなこと。
今だからわかる。
イチはずっと、わたしのカナに対する想いを知っていたんだ……。
抱き締められた腕の強さにただただすがって、正直に甘えた。
どれだけ自分がひどいことを言ったのか、しているのかなんて、本当の意味で知らないまま。
……そして、追い打ちをかけるように、残酷で大きな選択の時が迫っているだなんて、今のわたしは知るよしもなかった。