君の世界からわたしが消えても。

 ――わたしは今、扉の前に立っている。


 昨日ミヅキにあんなことを言ったからか、来てしまった。


 ……カナの病室に。


 今日ここに来る予定はなかったのに、どうしてか足が自然とここに向いていた。


 神様とか、魔法とか、そんなの100パーセント信じているわけじゃない。


 だけど、なんとなく、昨日ミヅキに言ったわたしのお願いが叶っているんじゃないかと思って、無意識にここに来ていた。


 深呼吸をし、緊張で震える右手でそのドアを開いた。


 ……だけど、その瞬間に落胆。


「やっぱり、起きてるわけないよね……」


 踏み入れた病室は、静かなまま。


 少しの希望は、脆く砕けた。


 だけど、これくらいのことでへこんではいられない。


 もう随分とカナのことを待っているんだから。


 今日目が覚めなくても、明日には目覚めるかもしれないって、もう前向きに考えられるから。


 目を覚ます確率が0パーセントって言われない限り、何年、何十年と待っていられると思う。

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