君の世界からわたしが消えても。

 一晩よく考えたら、昨日浮かんだ悪い妄想は消えた。


 もしかしたらミヅキは、カナを連れて行っちゃうんじゃないか、っていうこと。


 カナも、ミヅキのもとへ行くことを選ぶんじゃないか、っていうこと。


 そもそもふたりがそう思っているんだとしたら、とっくにカナはここから消えているはずだから。


 『生きたい』って気持ちがあるから、こうして頑張っているんじゃないのかな。


 きっと今のカナは、現実を受け入れるための器を作っている途中なんだと思う。


 早く起きてほしいって気持ちと、気長に待ちたいという気持ちがあるけれど、目が覚めた時にカナがカナのままでいてくれたら、それだけで充分だ。


「カナはねぼすけさんだね」


 すっかり傷も治って、綺麗な顔で眠りにつくカナに話しかける。


 この姿はまるで、眠りの森の美女。


 ……改め、眠りの森の美男子だ。


 我ながらくだらない発想だと思うけど。


 おまけにドレスを着て眠るカナを想像して、ひとりでくすりと笑ってしまった。


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