君の世界からわたしが消えても。
でも、そんな重たい意味を持つこれを、どうやって渡せばいいのかなんて考えてもいなかった。
勝手に細工して、ミヅキに頼まれた以上のことを、このペンダントに施してしまった。
わたしはこれを、ちゃんとカナに渡せるのかな。
このことも、わたしの不安要素の大部分を占めている。
「……こんなことを考えても、肝心のカナがまだ眠ったままだからなあ」
独り言は、狭いこの空間によく響いた。
ベッドの脇に置かれた椅子に座り、カナの顔を眺めているとノックの音がした。
「すみません、もうすぐ面会時間終了になりますので」
そう言って顔を覗かせたのは、この病室を担当している看護師さんだった。
今出ます、と伝えると、看護士さんはにっこりと微笑み次の病室へと向かって行った。
「じゃあ、カナ。時間が空いたらまた来るよ」
目にかかる彼のこげ茶色の髪をそっと払って、病室を出た。