君の世界からわたしが消えても。

 ――その知らせは、突然だった。


 “カナが目を覚ました”


 震える声で連絡をくれたのは、カナのお母さんだった。


 8月21日、14時。


 じりじりと焼ける暑さの中、外に飛び出した。


 むわっとした暑さが一気に肌にまとわりついたけど、そんなこと気にしている余裕なんてない。


 はやる気持ちを抑えられず、ドクドクと脈打つ心臓がやけにうるさい。


 タクシーを待っている時間さえも惜しかった。


 なにかせずにはいられなかった。


 イチも同じだったようで、玄関の前にはわたしと同じ知らせを受けた彼がいた。


 イチと一緒に、急いで病院まで向かう。


 病院までは歩いて30分の道のり。


 いつもはゆっくりと歩くその道を、イチに手を引かれながら走った。


 ぽたぽたと汗が落ちる。


 息が上がって苦しいし、脇腹も痛い。


 イチに掴まれた左手首はやけに熱かった。


 転ばないように足を動かすのに必死だった。

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