君の世界からわたしが消えても。

 わたしがミヅキにカナのことをお願いした日から、僅か2日。


 まさか、本当に願いが叶ったなんて……。


 信じられないけど、これは夢じゃなくて、確かに現実。


 ドキドキと煩いくらいの胸の鼓動と、病院特有の薬品の匂いがそれを物語っている。


 昨日来たばかりのこの場所。


 314号室のドアの前。


 ここに、わたしは今、また立っている。


 汗だくで、顔も火照って真っ赤だと思う。


 息の荒いわたしたちを見て、擦れ違う看護師さんたちはびっくりしたと思う。


 イチと違って体力もなく運動不足なわたしは、今にも倒れこみそうなほどの疲れを感じていたけど、このドアの向こうにはカナがいるんだと思ったら、そんなものは吹き飛んだ。


 一度深呼吸をして、それからドアに手をかけた。

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