君の世界からわたしが消えても。

 おじいちゃん先生に案内された場所は、こぢんまりとした少し暗い部屋だった。


 本棚とデスク、何脚かの椅子が置かれている、至ってシンプルな空間。


 デスクのところにある回転椅子には先生が座り、その前に椅子を並べられて、わたしたちはそこに腰かけた。


 やっと一息つけた、という感じだ。


「落ち着いたかな?」


「はい……。ありがとうございます」


 おじいちゃん先生は「よかった」と言って、にっこり笑った。


 わたしとカナの手には、スポーツ飲料が握られている。


 この部屋に来る途中、院内の購買でおじいちゃん先生が買ってくれたものだ。


 わたしたちがすごく汗をかいているのに気付き、買ってくれたのだ。

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