君の世界からわたしが消えても。

 痛々しい表情。


 それを、この1年間でどれだけ見てきたんだろう。


 もう、そんな顔をしないでほしい。


 そう思うのに、わたしはまだイチのこの表情を変えられないままでいる。


 こんな顔をさせているのは、わたしのせい。


 ……嘘が下手な、わたしのせい。


 わたしがいつまでも、ここに通い続けるから。


 イチにこんな顔をさせているのは、わたしが弱いからだってわかってる。


 ぎゅっと握り締めた手。


 手のひらに爪が食い込んだ。


「ミヅキ……」


 もうこの世に存在しない、わたしにとっても、イチにとっても大切だった人の名前。


 呼んでも呼んでも、返事がくることは一生ないこと、とっくにわかってる。


 それでも、呼べばいつか応えてくれる気がして、こうして無意識に口をついて出てしまう。


 本当にわたしは、どうしようもないほどの弱虫だ。


 立ち直れる日なんて、来ないんじゃないかって思う。


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