君の世界からわたしが消えても。

　だけど、その頃の病院内で、実は擦れ違いが起きていたらしい。


　植物状態だった人が目覚める瞬間というのは、予兆もなく突然だ。


　その瞬間に立ち会う人がいる時もあれば、いない時もある。


　それは当たり前のこと。


　だけど、ケースによって対処法が変わってくるのだという。


　それは、“もしも”の時に最も重要らしく、この場合の“もしも”とは、患者に異常が見られた時のことだ。


　病院側にとって大事なのは、できる限り両者にショックを与えずに状況説明をすること。


　今後のプランを考え、環境を整えること。


　先生はそう言った。


　基本的に原則はないけど、目を覚ました場面に最初に立ち会った者が医療関係者なら、それは一番の好機らしい。


　その場合には、原則に近い暗黙の了解が生まれるという。


　それは、『目を覚ました瞬間に立ち会ったのが医者や看護師の場合、患者が初めて行う面会には必ず立ち会うようにする』というものらしい。