君の世界からわたしが消えても。
原則はないものの、カナの初回の面会は、担当医だったおじいちゃん先生か看護師が立ち会う手はずだったのだそうだ。
しかし、訳あってふたりともその場を離れることになってしまった。
カナが目覚めたことを知らせようと電話をしに行った看護師は、その後すぐに病室に戻るはずだった。
でも、急患が相次ぎ、手が離せなくなってしまっていたらしい。
だけど看護師は、先生がいるから大丈夫だと思っていたのだそうだ。
しかし、そのおじいちゃん先生までもが呼び出されてしまった。
おじいちゃん先生は、出て行った看護師が数分で戻るだろうと思い、呼び出しのもとに向かったという。
医者も看護師もほとんど出払い、急患でごった返す処置室の中、ふたりは鉢合わせた。
だけど、手を離すわけにもいかず、落ち着いた頃に抜け出してカナの病室へと向かった時には、未然に防げていた事態が起こっていたのだという。
結果、実はカナの記憶には欠けた部分があって、カナのお母さんも、イチも、そしてわたしも、カナも、みんなが心に傷を負った。
……ということらしい。
そこまで話されて、おじいちゃん先生が言った感謝と謝罪の意味が、ようやくわかった。