君の世界からわたしが消えても。

「美月、俺がいない間、元気にしてた？」


　……そう。


　それは、カナがわたしをミヅキだと誤認していること。


「……うん、元気にしてたよ」


　どんな表情をすればいいのかわからなくて、ぎこちない笑みを浮かべることしかできなかった。


　わたしが選択の場に立たされ、考える間もなく正解かわからない答えを出したこと。


　最初はそのことを甘く見ていた。


　おじいちゃん先生もわたしにお礼を述べるくらいだったし、しばらくの間、ミヅキとして生きればいい、ミヅキのふりをすればいいだけだと軽く見ていた部分があった。


　だけど、実際にわたしが言ってしまった言葉、選んでしまった答えは、そんなに簡単なことじゃなかった。


「上手く、話せないな……。これじゃ、美月と、ちゃんと会話できない」


　自分の思い通りに言葉を発せられないことが苦痛であるかのように、カナは喉元を抑え悲しそうに笑った。


　それを見て、心に罪悪感が募っていくのを静かに感じた。