君の世界からわたしが消えても。

 ……ミヅキとして生きていかなくてはならなくなったわたしと、カナに起こる問題。


 それは、深刻なものだった。


 今は上手く喋ることもできなければ、動くことすらままならないカナだけど、いつかはもとの生活に戻る日がやってくる。


 その日はすぐ来るかもしれないし、もっと先かもしれない。


 当然日常に復帰すれば、帰る場所にはカナのこと、ミヅキのこと、そしてわたしのことを知る人物が必ずいる。


 病院にいるうちは、いい。


 カナが眠りに落ちてから最初の1か月、頻繁にカナの様子を見に来てくれていたクラスメイト達の姿は、今はもうないから……。


 みんな高校生活で忙しく来られないのか、もうカナのことを忘れているのか定かではないけれど、今はそれが好都合とも言える。


 とにかく、カナとミヅキが事故に遭い、ミヅキが帰らぬ人となったことを、周りにいるほとんどの人が知っている。


 カナ自身のことをカナ以上に知っている人が、身近にたくさんいる。


 卒業式の間際に起こった悲劇、その式に出られなかったわたしたちの噂は瞬く間に広がったから。


 時が流れてその話は風化されつつあるけれど、カナが戻ってしまえば、また一気に注目を浴びることなんて容易に予想ができる。

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