君の世界からわたしが消えても。

 カナの記憶が戻らないまま日常生活に戻った“もしも”の時のことを考えて、ぞっとした。


 不用意な人の視線、同情の言葉を投げかけられることだってあると思う。


 そうなった時、隣にいるわたしの名前を万が一でも呼ばれたとしたら。


 わたしがミヅキじゃないことが、ばれてしまったら。


 カナの信じていたもの全てが作り物だったんだと、気付かれてしまったら。


 その時、カナはどうなっちゃうの?


 たぶんそんなことになったら、本当にもう戻れなくなる。


 それに、カナが目覚めたことが、すでに周りに知れ渡っている可能性だってあるんだ。


 もしそうだったとして、中学時代の友人がここを訪ねてきたらどうする?


 どう対処すればいい?


 間違った対応をすれば、今度こそ取り返しのつかない事態になるかもしれないんだ。

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