君の世界からわたしが消えても。

 ……問題は、それだけじゃない。


 わたしの、存在。


 わたしの、心の問題。


 カナと出会ってから今までずっと、カナのことだけを考えて、カナのためだけに行動してきた。


 それは“ハヅキ”として、カナに見てもらいたかったから。


 報われたことなんて一度もなかったけど、カナに『葉月』って呼ばれるだけで嬉しかった。


 それだけで、わたしの存在を認めてもらえたような気がしてた。


 だけど、今のわたしはただのミヅキの代理品で、仮初の存在。


 これからミヅキとしてカナに接するということは、“ハヅキ”であることをやめるってことだ。


 それは、カナに“ハヅキ”として見てもらえなくなるのと同じことで――。

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