君の世界からわたしが消えても。

 予想は、きっと当たってる。


 カナの中にミヅキしか存在していないことが、ひしひしと伝わってくる。


 ミヅキ以外の人は必要ない存在であるかのように、綺麗に忘れているみたい。


 胸がズキズキと疼き、痛くて悲しくて、涙が出そうになる。


 それでも、笑った。


 今一番不安なのは、カナだと思うから……。


 カナは、“お母さん”という存在が自分にいることはわかるけど、その人がどんな顔なのか、どんな名前だったのかは覚えていなかった。


 友達がたくさんいたことも覚えているみたいで、いつも一緒に笑ってた人がいるような気がするとも言っていた。


 けれど、その人の名前はもちろんのこと、なにをして遊んだか、なにを話したか、どんなことがあったか、それは全部抹消されていた。


 希望を捨てたくなくて、少しでもわたしのことを覚えていてくれたらと、思い出の場所でしたお花見や、誕生日会の話を出した。


 ……でも、だめだった。


 みんなで作ってきたはずの思い出が、カナの記憶の中では、違ってた。


 わたしもイチもいなくて、カナとミヅキがいるだけだった。

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