君の世界からわたしが消えても。
「カナ……、奏汰に、紹介したい人がいるの。会って、くれる?」
ミヅキの柔らかい物腰を意識して、ミヅキに似せるように話す。
騙していることに引け目を感じているくせに、わたしの行動はその感情に伴わない。
その理由に思い当たることがあるのに、そこには目をつむった。
……ずるいずるいわたしが、そこにいた。
全然呼び慣れないカナの名前を呼び捨てにするのは、正直とても勇気がいる。
ずっと呼べなかったそれを口に出すことが、まるで禁忌のようで、いたたまれない。
そんな気持ちを隠したわたしに、カナは笑う。
「さっき、来てた人たちでしょ? ……会うよ」
これから会うのが、自分にとってどんな人物なのか予想がついてるみたいなその落ち着いた口振りに、わたしは少しだけ、背筋がヒヤリとするのを感じた。