君の世界からわたしが消えても。

 カナの言葉を聞いた先生は、廊下にいるカナのお母さんとイチを呼んだ。


 中で話していたわたしたちの声は、ドアのすぐ近くにいた彼らにもちゃんと聞こえていたのだと、顔を見ればわかった。


 ……ショック、だよね。


 わたしもそうだもん。


 忘れられてしまうのって、こんなにもつらいんだね……。


 病室に入ってくる緊張した面持ちのふたりに感化されて、わたしまで緊張する。


 カナが横になっているベッドのすぐ傍に立った、カナのお母さんとイチ。


 産みの親と、親友。


 かけがえのない存在のはずなのに、距離のある接し方。


 それを見て、カナとの間には確実な壁があるのだと感じた。

< 81 / 298 >

この作品をシェア

pagetop