君の世界からわたしが消えても。

 ふと、イチと目が合った。


 睨むようなその目に、一瞬ビクつく。


 だけど、気付いた。


 イチもショックなのを隠せないんだってこと、いつもより数段、顔が強張っていることにも。


 ミヅキを失って、カナが目覚めないかもしれないと聞いた、あの日。


 その時以来、わたしはイチの泣いた顔も、本当の笑顔も見ていない。


 顔に出にくくてわかりにくいけど、親友がこんなことになって悲しくないわけがないんだ。


 小学校入学前からイチとカナは友達だったと言ってたし、わたしがミヅキと生まれた時から一緒なように、イチとカナもそれと同じくらい一緒にいた。


 ……死んでしまったミヅキは、ここに戻ってくることはもうない。


 それがわかりきっているからこそ、受け止められる部分もあった。


 だけど、カナは生きてる。


 生きているからこそ、諦められない。


 自分のことを思い出してほしいと願う。


 今まで通りにいかないことに憤りを感じるし、悔しくなる。

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