君の世界からわたしが消えても。
普段と変わらない表情でわたしのところへ来て、なにも言わずに寄り添ってくれた。
何日も泣き続けるわたしの傍に、ずっといてくれた。
だから、わたしも泣くのはやめた。
でも、わたしが嘘を吐いたり我慢すると、決まってイチは苦しそうな顔をする。
イチは、優しくて、強い。
そんな彼に、もう何度も助けられた。
だけど、知ってるよ。
気丈に振る舞ってるんだってこと。
知ってたんだよ、ずっと。
だからこそ、言わなかった。
飲み込んだ、“ごめん”。
大きな背中に、心の中で呟いた。
……日は、とっくに沈んでいた。
温かく包み込むような優しい光を放出する月だけが、暗闇に溶けていくわたしたちの姿を見守っていた。