君の世界からわたしが消えても。

 今のカナを支えているのは、“ミヅキ”だってわかってる。


 カナが優しい顔で微笑むのは、わたしをミヅキだと思っているからだってこともわかってる。


 わたしの想いが報われることはないって、ちゃんとわかってるから。


 ……許してほしい。


 一時だけの幸せを、隣にいられる権利を、今だけわたしに譲ってほしい。


 本物のミヅキには一生なれないって知ってるよ。


 今だけでも、カナに一番近い位置にいるのがわたしなら、それでいい。


 ハヅキとして見てもらいたいけど、そうなったら、カナの隣にはいられない。


 その役目はできない。


 ……ミヅキ、ごまかしていて、ごめんね。


 『こうなったのはしょうがない』とか『カナのため』とか、いくら正当な傍にいる理由をつけてみても、結局わたしはずるいだけだった。


 “カナの傍にいたい”っていう、特別な感情が、そこにあったから。

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