君の世界からわたしが消えても。

 それともうひとつ、わたしはミヅキに謝らなくちゃいけないことができました。


 必ずカナに渡すから、と約束したペンダント。


 本物のミヅキが入ったこれを、しばらくの間はカナに渡すことができません。


 もしこれを渡して、カナがこのペンダントの中身に気付いてしまったら、わたしは本当のことしか言えないから。


 もしかしたらそのせいで、カナの身に良くないことが起きてしまうかもしれないから。


 たったひとつの約束すら守れない、卑怯な妹でごめんね。


 でも、誤解しないでほしい。


 一生渡さないわけじゃない。


 もうすでにぼろぼろになりかけているわたしは、きっとそんなに長くミヅキのふりをすることなんてできない。


 そうなってしまった時、カナは事実を受け入れられるのか、それとも受け入れられないのかはわからない。


 だけど、わたしはそうなってしまう前に、カナができるだけ傷つかないようにする方法を探すから。


 ……こんなことを言ってるけど、本当はわたし、不安しかないんだ。


 本気でミヅキになりたいわけじゃなかった。


 ただ、カナがわたしのことを思い出してくれればいいだけだった。


 楽しかった頃に戻りたいだけだった。


 それだけだよ。

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