君の世界からわたしが消えても。
お昼になり、本日2つ目の訓練開始。
「う……っ」
「ど、どんまいっ」
カナが今格闘しているのは、お昼ご飯に出てきた黒豆の煮物。
つるつるころころしていて、箸だとつまむのが難しい。
まさかお昼ご飯でも訓練するとは思わなかったよ……。
カナのご飯の献立は、おかゆと液状になったおかず、プラス黒豆。
ずっと点滴でしか栄養を取っていなかったから、胃腸に優しいものからだんだんと慣らしていかないとだめなんだって。
胃袋も小さくなっているだろうし、食べる量も少量から徐々に増やしていくみたい。
いろいろ考えられてるんだなあって感心しちゃうよね、本当に。
わたしが内心そんなことを思っている横で、今だ豆に悪戦苦闘しているカナ。
ちょっとかわいそう……。
「うっ、俺、無理。豆、つまめない……」
無言で頑張ってるなあと思っていたのに、突然聞こえたのは泣き言だった。
なんか、カナらしくない。
「えっ、うーん、もう少し頑張ろ?」
苦笑いでそう言うとカナは渋々箸を持ったけど、豆は転がるだけで持ち上がってはくれない。