【完】クールな君に胸キュン中!
「あれ?折原? なんでここに?」
「ごめん、ちょっと桐谷くんに用があって」
人は窮地にたたされると、スラリと思いついた嘘を平気で言える。
それがあたしにもできて、自分でも驚いた。
「そーなんか! 膝は大丈夫?」
「うん、もう平気だよ! じゃあ、あたし戻るね」
「おう。 でもなんか、顔赤くね?大丈夫?
風邪とか引くなよ?」
「だ、大丈夫! じゃあね!」
顔が赤いのは、他に理由があるからだよ……。
あたしは恥ずかしくて、急いで部屋を飛び出した。
足の痛みとか気にしてられない。
……さっきの、何……?
疑問がたくさん浮かんできて、あたしの心にモヤを作っていく。
せっかく近づけたと思ったのに、今あたしは、桐谷くんから遠ざかっている。
あと少しが、どうしても届かない。