【完】クールな君に胸キュン中!
「へぇ〜。勇者気取りか?」
ふいに、男子生徒はふっとバカにしたような笑みを浮かべた。
「ずいぶんと小さな勇者に好かれてるんだな、桐谷」
ニヤニヤと、嫌な笑みを絶えず浮かべながら、あたしの後ろにいる桐谷くんに話しかける。
「でも、この子はお前のこと何も知らないんじゃねぇの?
中学のときの、〝あのこと〟……」
「言うな!!!!」
ビクリと体が震えた。
今まで聞いたことのないような桐谷くんの悲痛な叫びが体育館で響いた。
……何?
見渡してみると、何事かと周りのみんなも呆然と桐谷くんのことを見ている。
後ろを見れば、桐谷くんは胸を押さえて息切れしていて。
顔面蒼白で、冷や汗をかいているようだった。
……なにか、とんでもないことをしでかしてしまった予感がする。
なのに、こんな様子の桐谷くんを見ても、男子生徒は皮肉なことに笑みを絶やさなかった。