【完】クールな君に胸キュン中!
「なんでだよ?言えよ、桐谷。この子に本当のこと。
中学のとき、バスケで英雄だったお前がしでかしたサイテーなこと……」
やめて。お願い、待って。
「……やめ、ろ」
このままじゃ、桐谷くんが……。
「おい、お前ら!」
松岡くんも、度が過ぎると感じ取ってすぐさま阻止しようとする。
だが、男子生徒の口は止まらなかった。
「大事な友人を、死なせたこと」
……えっ?
戸惑った。
本人の口から聞いたワケではないのに。日常生活では聞かない単語に、心の中で揺らぎが生じた。
だから、間に合わなかったんだ。
すぐ近くにいる桐谷くんが、床に倒れていく様子がスローモーションのようで見える。
あたしはすぐに手を伸ばしたけど……ああ、ダメだ。
あと少しが、届かない。
――バタンッ!!
次の瞬間、体育館に大きな音が鳴り響いた。
さっきまで後ろにいたはずの桐谷くんが、横たわるように倒れている。
何もできなかった。
守るはず……だったのに。
手を差し伸べて、支えることすら。