【完】クールな君に胸キュン中!
君のために
【折原 奈乃 side】
桐谷くんは過去のことを話し終えると、瞼の裏で何か想いを伏せてるように瞳を閉じていた。
すぐに言葉なんて、出なかった。
その代わり、あたしの瞳からはこれでもかってほどの涙が溢れている。
ほどなくして、目を開けた桐谷くんが、あたしの顔を見てふっと顔を緩めた。
「どうしてあんたが泣いてるの」
「……っ」
「どちらかと言うと、泣きたいのは俺の方なんだけど」
そりゃあ、そうだ。
大切な人を失って、どうしてずっと、平気な顔して生きてこれたのか……。
ううん、きっと平気なんかじゃなかったよね。
たまに見せてた、桐谷くんのあの悲しい表情が思い浮かぶ。