【完】クールな君に胸キュン中!
数秒の間のあとだった。
ポスンと、桐谷くんがあたしの肩に顔をうずめる。
そして、桐谷くんの手がためらいがちに、あたしの背中に触れてきた。
腕の中で、小さな息をはく音が聞こえて……あたしは強い力で抱きしめられる。
抗う理由なんて、なかった。
「……怖いんだ……」
深いため息が聞こえた。
あたしは黙って、桐谷くんの言葉に耳を傾ける。
「誰かに心を寄せると、また失くしてしまいそうで怖い。
踏み込まれると……悪くない誰かが、俺のせいで傷つく」
「桐谷くん……」
震える体を、より一層強く抱きしめる。
中学の時のことを思い出してるんだろうな……。
でもきっと、その言葉の中には、あたしが阿部さんに絡まれた一件のことも含まれている。