【完】クールな君に胸キュン中!




数秒の間のあとだった。



ポスンと、桐谷くんがあたしの肩に顔をうずめる。


そして、桐谷くんの手がためらいがちに、あたしの背中に触れてきた。



腕の中で、小さな息をはく音が聞こえて……あたしは強い力で抱きしめられる。



抗う理由なんて、なかった。





「……怖いんだ……」



深いため息が聞こえた。


あたしは黙って、桐谷くんの言葉に耳を傾ける。



「誰かに心を寄せると、また失くしてしまいそうで怖い。
踏み込まれると……悪くない誰かが、俺のせいで傷つく」



「桐谷くん……」



震える体を、より一層強く抱きしめる。


中学の時のことを思い出してるんだろうな……。


でもきっと、その言葉の中には、あたしが阿部さんに絡まれた一件のことも含まれている。



< 220 / 453 >

この作品をシェア

pagetop