【完】クールな君に胸キュン中!
だけど彼は、ふっと笑って手のひらをあたしに差し出す。
「はい」
「……あ」
あたしがその手に手のひらを重ねる前に、桐谷くんが先に握りしめた。
ドキリと胸が高鳴る。
「行くよ」
そして、ふたり同じ歩幅で歩き始めた。
人混みの中に、あたし達は入っていく。
「……またあたしがコケそうになったら、すぐに離していいからね」
「え?」
「桐谷くんまでコケるのに巻きこむわけにはいかないから……」
「そうだな。巻き込まれるのはイヤだし、すぐに手を離すよ」
……うっ。
やっぱりそれは、寂しいかも……。
あたしは桐谷くんの言葉に、ズーンと肩を落とす。
すると隣で、ふはっと噴き出すような笑いが聞こえた。
「うそ、冗談。倒れる前に俺が助けるよ。だから、この手を離さないで」