【完】クールな君に胸キュン中!
――いつかの記憶が蘇る。
思わず身震いしそうになった。
ダメだ。
やっぱりどうしても、この人を前にするとあたしは弱くなる。
何も言わないあたしに対して、須賀さんはさらなるひどい仕打ちをしてきた。
「あんたと付き合ってるとか、本当に趣味悪い男ね。どうせ同情でもされて仕方なく……ってとこでしょ?
わりとあの人、いい顔してたし」
「…………」
顔じゃない……。
桐谷くんのいいところは、中身だよ。
「桐谷くん……だっけ? まぁ、近いうちに別れるんじゃない?あんたの過去のこと教えたら」
ドクンとイヤな音が響く。
「……っ!言わないで……!」
お願い、それだけは……!
だって、あたしの過去のことを知られたら、絶対に……。
絶対に桐谷くんは、あたしのことを嫌いになってしまう。
いじめられてて、弱くて、泣き虫なあたし。
今の姿は全て、偽りだと思われてしまう。