【完】クールな君に胸キュン中!
奈乃は俺のことを、中学の頃から知ってたんだ。
母親には見放され、友人には裏切られて……そんな絶望の中で、自分の存在意義を見いだせなくなっていたときに、俺が彼女を見つけたんだ。
……偶然にも、図書館の片隅で。
あの頃……俺はよく徹に、テスト期間は図書館で勉強するぞって拉致られてたから……きっとそのときのことなんだろう。
それって、奇跡じゃないか?
もし俺が、その日、筆箱を忘れてなかったら彼女は俺にシャーペンを貸さなかったかもしれない。
そもそも、徹に誘われていなければ、図書館にも行ってなかった。
だとすれば……。
「ごめんね。こんな重たい話して……。引いたかな?」
話を聞いていて、何も言わない俺に対して奈乃が不安そうにそうつぶやく。
もともと口数の少ない俺が、うまく言えるかわからないけど……。
「いや、良かったって安心した」
本当に心からそう思う。
「……安心?」
言葉の意味がわからず、首をかしげる奈乃。