庭師とお姫様 (naturally番外編)
庭の奥に木々が生い茂った、小さな小さな森のようになった一角がある。


そこには色とりどりの花で彩られた花壇があって。
その花たちに囲まれるような形で小さな墓石が立てられていた。



「……こんにちは、お母さん」



その墓石に刻まれた名前をそっと撫でながら、ミリザ姫はそこに眠る母に語りかける。


独りぼっちで城に引き取られたミリザ姫の唯一の心の支えが、父である王が作ってくれたこれだった。


母の名前を指先で辿りながら、ミリザ姫は頭の中に大好きだった母の笑顔を思い出す。



いつでも自分の幸せを願ってくれていた母。
そんな母が、自分が政略結婚で嫁ぐことになったことを知ったら……どう思うだろう。



もしかしたら母は、いずれこうなってしまうことを懸念して、自分が王家に嫁ぐのを拒んでいたのかもしれない……。
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