庭師とお姫様 (naturally番外編)
ましてや。
歴史と伝統を重んじるクロチェ国の王族は、プライドが高くて取っつきにくい人間ばかり。


城に出入りする者たちは、王族の機嫌を損ねるまいと、必要最小限しか話さない者がほとんどだ。


だから、彼の自然体な態度や口調がミリザ姫には新鮮に映ったのだった。


しばらく眩しそうに木の上の鳥の巣を眺めた後、



「では、姫様。俺はこれで」



庭師の彼はミリザ姫に軽く会釈をして中庭の方へと足を向ける。


何気なく彼を目で追っていたミリザ姫に、立ち去る間際に彼の腕に大きな切り傷が見え、



「あのっ」


「はい?」


「腕に怪我が……」



姫は咄嗟に彼の腕に手を伸ばして引き留めた。


< 15 / 70 >

この作品をシェア

pagetop