庭師とお姫様 (naturally番外編)
「私の母は市井の人間なんです。だからお姉様方と違って、私にはこのような、王族としては役立たない知識しかなくて……」



そう言って自嘲じみた痛々しい笑みが、ミリザ姫の顔に浮かべられる。


それがまるで自分の行いを恥じているかのように見え、庭師は励ますようにその細い肩にポンと手を添えた。



「王族としての知識ってヤツがどれほど尊いモノか、庶民の俺には逆立ちしてもわからない。……けど」



驚いたように自分を見上げるミリザ姫を一瞥し、彼は視線と共に肩に添えた手を、姫の手のひらへと伸ばす。



「俺は貴女のこの手に救われました。だから貴女は、ご自身とお母さんをもっと誇ってください」



身分に拘らない、こんなに優しい女性を育てられたんですから。



そう続けながら、重なった手のひらをギュッと握り締め、庭師は照れを隠すように彼女に向かってにっと笑ってみせた。


< 19 / 70 >

この作品をシェア

pagetop