庭師とお姫様 (naturally番外編)

カイに手を引かれて踏み入れた新しく自分の故郷となる国。


閉鎖的なクロチェと違って開放的で穏やかな空気の広がるマーセルの地と、カイと共に居られる生活に胸を弾ませた。


今日から我が家になる家を隅々まで見渡していたリザが、


「リザ」

「……あっ」


カイの呼び掛けで振り返った先にあった姿。
その姿にリザの胸はマーセルに来てから一番といえる高鳴りを覚える。


ニッと笑うカイに手を引かれて、緊張した面持ちでリザを見つめる男の子。


人懐っこいカイとは違って、賢そうな顔付きと大人しそうな印象を受ける。


「ほら、さっき話したリザだ。今日からおまえの母親になるんだぞ。仲良くしていこうなー」


「わっ……う、うん」


しゃがんで目線を合わせたカイが、ワシワシとその頭を豪快に撫でた。

その勢いの良さを首にぐっと力を入れて受け止めながら、ちらりとリザの顔を見る。


「よろしくね、ショウ」


「……うん」


二人に歩み寄ったリザがカイに倣ってしゃがみこみ、ショウの前に手を差し出した。


遠慮がちに自分の手を握り返した小さな手に、リザは目の前の二人を愛していくことを亡き母に密やかに誓っていた。





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